退職時に失業保険のことを考えない人はほとんどいないでしょう。しかし、失業保険のことをどれだけ知っていますか?
よく比較されるのが、自己都合退職と会社都合退職ですが、もらえる期間に差が生じます。そして自己都合退職で受給するためには、3ヶ月待たなければなりません。
この点はなんとなく理解している方も多いと思います。
ですが、場合によっては自己都合退職でも会社都合退職(特定受給資格者)扱いになることもあるんです。
今回は、失業保険がもらえる期間に的を絞って解説します。
なお、失業保険の手続きから受給までは、こちらの記事で解説しています。
【ホントにお得?】退職して転職するまでの失業保険の手続きを解説!
失業保険がもらえる期間について




失業保険がもらえる期間を「給付日数」といいます。
退職したときが自己都合なのか、会社都合なのか、はたまた、雇用保険の加入年数が何年かといったさまざまな情報を加味して、給付日数は決められています。
まずは、給付日数について解説します。
【一般受給資格者:3ヶ月待期あり】
自己都合退職の場合 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
全ての年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
【特定受給資格者:待期なし】
会社都合退職 | 被保険者期間 | ||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 120日(※90日) | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日(※90日) | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※ 受給資格に係る離職日が2017年3月31日以前の場合の日数
一般的に自己都合退職は早々の再就職がおすすめ


ですが、60歳の定年退職、定年後に再就職して65歳で失業をした場合、これはほとんどの場合、会社都合となりますので、60歳で240日、65歳で再度180日もらえます。
しかし、20年の雇用保険の加入期間が最も長く金額が大きいので、再就職で20年雇用保険に加入できそうなら、どちらでも良いことになります。
40歳未満退職の場合
- 再就職してからの雇用保険に加入期間でも、最高額をもらえる
- 会社都合の特定受給資格者なら、3ヶ月の待期無しで、給付日数も自己都合退職に比べて非常に多い
もしも退職後の進路が未定の場合は、できるだけ特定受給資格者となるようにした方がお得だということになります。
政府は、失業した人に、できるだけ早めの再就職を促すために、「再就職手当」の支給を行っています。できるだけ早く待期期間中に就職して、再就職手当をもらった方がお得なようにできています。
たとえ失業給付をもらったとしても、賃金日額の4週間分は、月給の50%から80%となっていますが、一般的に6割程度にしかなりません。
待期のある自己都合退職の場合は、早々に再就職して再就職手当をもらった方が、生活が安定するようにできているのです。しかし、退職したときにすでに転職先が決まっている人は、待期期間中に失業給付をもらわないまま就職となります。
失業給付の失業資格決定通知を受け取ってしまうと、自動的に再就職手当の受給資格も発生します。
そのため、雇用保険加入期間は、一旦リセットされて、再就職した会社での雇用保険加入期間がゼロからのスタートとなります。
40歳以上の人は
失業資格決定通知を受け取ってしまうと、少ない再就職手当だけで失業給付も十分に貰えないまま、失業給付の雇用保険加入期間を減らすだけなので要注意
自己都合退職でも特別受給者になる場合がある
自己都合退職でも、特定受給資格者扱いになる場合もあります。
それはどのような場合でしょう。
もしも、退職を決心した理由が、下記に該当する場合は、あなたも特定受給資格者に該当する可能性があります。
- ハラスメントが理由で辞めざるを得なかった
- 残業が多くて辞めざるを得なかった
- 労働環境がブラックだった
- 残業代が未払い等の労働基準法違反があった
- 生活を維持できないほど給料が下がった
このような働きたいけれども、辞めなければ心身の健康を害す、生活を脅かすような事情を会社が作り出した、などの特別な事情がある場合は、辞めた後に特別受給者と認定されることもあります。


ですが、すでに離職票が会社から発行され、退職理由の覧の「自己都合退職」にチェックがつけられています。
それでも、離職票に意義がある場合は、離職票に署名捺印を押す前にハローワークで異議を申し立てましょう。あとは、あなたではなく、ハローワークの職員が会社に事実確認をしてくれます。
会社は当然認めないので、会社と戦うことになる可能性が高いです。
ですから、辞める前にある程度証拠を集めておいて、ハローワークに異議申し立てをする時に一緒に提出するのがおすすめです。
残業が多い場合
タイムカードのコピーが一番良いのですが、難しい場合は、手帳に帰宅時間をつけておくのでも大丈夫です。
ハラスメント
スマホで会話を録音したり、日記のような記録を残すことも大切です。
給料関係
給料明細、無理な異動や転勤は、その辞令書や内辞の時の会話の録音等が有効です。
これらの証拠を手がかりに、ハローワークの職員が、前職の会社に問い合わせてくれますが、水掛け論になることも多いので、かなり嫌な思い・悔しい思いをすることもあります。
悔しい思いをした場合、戦って勝たないと乗り越えられずに、心の傷になってしまう人もいます。
一概には言えませんし、特定社労士でさまざまな労働争議を見てきた経験上、筆者の個人的見解としては、自分に適した良い転職先をさっさと見つけられるなら、新たな一歩を踏み出し、充実した生活を送る方が良いのではないかと思います。


つらい思いをして会社を辞めたのに、その会社と戦うのはとても大変です。泣き寝入りだと思う方もいるでしょうが、早く新しい良い職場に転職しましょう
就職困難者とは?
【就職困難な受給資格者(障害者等)】
被保険者であった期間 | ||
1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 |
心身に障害がなくても該当する場合があります。
その場合は、大企業の倒産や地域的に就職が著しく難しい地域で、中高齢者(45歳以上)の失業者が著しく多いと、中高齢者の求職が著しく困難な地域等、厚生労働省が指定します。
そのとき、該当地域のハローワークに特設窓口が設けられます。
自己都合でも上記のように、ハローワークが就職困難者と認定した人は、待期無しとなります。
失業保険がもらえる期間のまとめ
転職活動の状況にもよりますが、待期のある自己都合退職の場合は、早々に再就職して再就職手当をもらった方が、生活が安定すると見込まれています。
退職が自己都合なのか、会社都合なのか、雇用保険の加入年数が何年かや、年齢などさまざまな情報から給付日数は決められているため、自分にとってなにが最善か考えて転職をすすめていただければと思います。