基礎知識

有利に退職するには法律を知ることが重要!そして人としての在り方も重要に

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退職 法律のサムネ

転職を考えたとき、退職の時期をいつにするのか悩みどころです。

転職先の内定が出て、いざ会社を退職しようとした時に、就業規則に退職の時期に関する規定に初めて気がついた、なんてことはありませんか?

そして、既に就業規則に従うのが不可能なとき、あなたはどうしますか?

もしかしたら会社とトラブルになって円満退職できないこともあるかもしれません。

そんなことにならないよう自己防衛のため、退職に関する法律について知識を持っておきましょう。

会社とのトラブル回避のためだけでなく、法律は最も有利に退職する武器になることもあります

ここでは退職に関する法律について解説します。

退職に関する法律とは?

退職に関する法律について知っておこう

退職に関する法律というと、労働基準法ばかり気にする人が多いようですが、自己都合退職の場合は、民法の方が大きく関わってくることもあります

まずは、退職、すなわち雇用契約の終了について、民法と労働基準法の関わりとともに解説します。

雇用契約について

会社に入社するときに、あなたは労働基準法に則った労働条件を書いた書類(労働契約書)を渡され、それに納得した上で、署名捺印して入社しているはずです。

そして、就業規則も渡されているでしょう。これによって、会社(経営者)と社員(労働者)となるあなたの間で、雇用契約が結ばれたことになります。

これは、民法の「契約」に該当します

退職に関するトラブルが生じた時は?

しかし、労働に関する法律として、労働基準法というものもあります。退職に関して生じたトラブルについては、民法と労働基準法が関わってくるわけです

なお、会社とのトラブル問題は、傷害・暴行・横領・賄賂等々の刑事罰や税法その他法律が関係してきますが、この記事では、「有利に退職する方法」を解説しますので、これらの法律は除外します。

さて、本題に戻ります。

「民法<労働基準法」という法律には力関係がある

まず民法は一般法、労働基準法は強行法規だということを覚えておきましょう。

つまり、民法と労働基準法に、同じ項目があるとしたら、一般法の民法よりも強行法規の労働基準法の方が優先されるのです

労働基準法は労働者の権利を守るため&健全な会社の手引き書である法律

労働基準法は、経営者よりも圧倒的に立場の弱い労働者のため、憲法に基づき労働者の最低限度の権利を守るために作られた法律になります。

極端に言えば、「悪徳経営者から労働者を守る」ための法律です

労働者にとても有利な法律ではありますが、あくまで労働者の基本的人権を守るための「最低限の権利」を定めたに過ぎません。

ですから、誠実に人として道徳を守って経営している普通の経営者には、不利な法律であるどころか、健全な会社を運営するための手引き書となるべき法律なのです。

一方、経営者の権利は民法が守ってくれます。

退職は、雇用契約の終了ですから、経営者と労働者の双方の合意が理想です。

そのため、円満な退職のために関わる法律も、民法(一般法)と労働基準法(強行法規)の両方の理解が必要になります

「退職の申し出は最低1~3ヶ月前」は法律違反というのはウソ?ホント?

退職の願い出は早めでも遅めでもダメなのか?

結論からいうと、「退職の申し出は最低1~3ヶ月前」というのは、法的にさまざまな解釈があって、ウソもホントもないのです。

その理由と「ではどうすべきなのか?」について詳しく解説していきます。

法律ではどうなっているの?

「退職を申し出るときは退職日の○ヶ月(○日)前に申し出る」というような退職の申し出時期に関して就業規則に規定している会社は多いものです。

一般常識としても、「退職希望日の1~3ヶ月といった引き継ぎが完了する猶予を持って退職を上司に申し出る」のがビジネスマナーだと考える人も少なくないでしょう。

それでは、退職や解雇に関する民法と労働基準法の規定について比較して見ましょう。

民法による退職の規定は?

まず、民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)を紹介しましょう。

◆民法
第627条

  1.  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
  2.  期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
  3. 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない

民法627条によると、雇用の定めのない正社員の場合は、「退職届を出した日の2週間後に雇用関係は終了する」とあります。

つまり、「正社員の場合は、退職希望日の2週間前に退職届を出せば、会社の同意が無くとも退職希望日に退職できる」という意味です。

また、同条3項で、「6ヶ月以上の雇用を定めて報酬を決めたときは、3ヶ月前に退職を申し出るべき」というような条文があります。

本来6ヶ月以上の雇用期間を定めて、半年更新や1年更新で雇用契約を結ぶ期限付の雇用契約についての条文ですが、拡大解釈をして、期間の定めのない正社員の場合も当てはめることができないわけではありません。

すると、「6ヶ月以上の期間雇用契約を結ぶ期間の定めのない正社員として報酬(給与)を定めた者」と解釈を展開すれば、「退職は3ヶ月以上前に申し出なければならない」という就業規則もあながち違法では無いのです

労働基準法による退職・解雇の規定は?

一方、労働基準法の労働者の退職に関する定めはというと、明確な定めはありません。

確かに労働基準法にも、解雇・退職の規定を設ける規定はあります。

しかし、労働基準法は労働者を守る法律ですから、不当解雇を防ぐために、解雇に関する細かい規定ばかりです

労働基準法には、就業規則が労働基準法に抵触していないかチェックするために、労働基準監督署の届け出義務もあり、その時に労働者の過半数を代表する者(労働組合の代表者含む)の意見書も必要としています。

労働基準監督署のチェックに合格した就業規則は、労働者全員に周知する義務の規定もあります。

ですから、就業規則の全文を書いた書類や冊子を労働者全員に配布したり、労働者全員が見る場所に就業規則全文を掲示したら、経営者は執行規則の周知義務を果たした者とされます。

つまり、就業規則の全文の書類を配布されていれば、社員はその内容を把握する義務もあるわけです。

就業規則には、退職の意思表示をする時期の規定が書いてあることが多いのです。

もしも退職に関してトラブルが生じた時は、「社員は就業規則を知っている前提でお話が進む」ということを知っていなければなりません

だから、退職を考えたときは、退職届を出さなければならない時期について、就業規則の退職の規定の確認を忘れないようにしなければなりません。

労働基準法にも、就業規則の遵守義務が規定されています。

◆労働基準法(労働条件の決定)
第2条

  1. 労働条件は、労働者と使用者が対等の立場によって決定するものである。
  2. 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

ただし、この条文が、就業規則に退職届けの提出の時期について「○ヶ月前」義務づけることが合法だという訳ではありません。

就業規則に3ヶ月前の退職の申し出を義務づける項目がある場合は?

判例でも民法の「2週間前」と解雇予告との公平性を考えて「1ヶ月前」というのが強行法規という2つの説に分れているだけですから、「3ヶ月前の退職の申し出は、早すぎるのではないのか?」と思うかもしれませんが、執行規則に退職の申し出を「3ヶ月前」と規定する会社もあります。

民法627条3項を拡大解釈したのか、一般常識からなのか、それは定かではありませんが、「退職の申し出は3ヶ月前にしなければならない」という内容を就業規則に明記しても、その就業規則を労働基準監督署のチェックは通過します。

退職届けの申し出の判例には「3ヶ月前」なんてないのに、どうしてなのでしょうか?

それは、この規定のある就業規則が違法かどうかを判断する労働基準監督署は、「労働基準法に抵触していないか」のチェック機関だからです

労働基準法には、退職届の期間の定めについて規定はありませので、退職届の期間の定めについては、就業規則に何と書かれていても労働基準法に抵触しようがありません

「3ヶ月前の退職届提出」については、民法・労働基準法上も、常識的にも、何の問題もなさそうに見えます。

ですが、3ヶ月前の退職の申し出は、労働者には早すぎます。経営者の解雇予告通知も1ヶ月前で良いのに、不公平だという判例だってあるではありませんか。どうしてでしょう?

執行規則に関する法律が労働基準法にある

就業規則については、労働基準法89条に、作成(変更も含む)・届け出については90条に、解釈の仕方の例も含めて非常に詳しく書かれています。

社員が10人以上の会社は就業規則を定めなければならず、労働基準法に抵触しない限り経営者が自由に定めることができます

一応、就業規則を労働基準監督署に提出する際には、経営者が作成した就業規則を労働者の過半数を代表する者、あるいは労働組合の代表者に見せ、彼らの「意見書の添付」が義務づけられています。

ここで注目すべきは、就業規則に添付するのは労働者の代表者の「意見書」であり「同意書」ではないことが重要です。

労働基準法に抵触していなければ、労働者全員が反対する意見書付就業規則でも合法とされるわけです。労働基準法90条の判例を元にした解釈例規(②意見聴取の程度)に、この内容はしっかりと明記されています。

しかし、労働者の意見を無視した就業規則の不利益変更は原則禁止です(労働契約法9条)

明らかに労働者に不利となる就業規則の変更届けの場合は違ってきます。

労働基準監督署で行われる3つの審査


  1. 変更前の就業規則に比べてどのくらい不利益になるのか?(不利益の程度の審査)
  2. 就業規則の不利益変更の必要性について相当な合理的な理由があるのか?
  3. 就業規則の変更内容を相当な話し合いを持って労働者に周知されたのか?

3が十分に行なわれていて、労働者が納得済みなら問題はないのです(労働契約法10条)。

しかし、1の不利益度にもよりますが、2の「相当な合理的な理由」については、その変更をしなければ、会社が倒産する等の明確な危機迫るよほどの理由がない限り、労働基準監督署は、就業規則の変更を経営者に差し戻します。

労働者全員が納得していたとしても同様です。労働者が騙されているものと労働基準監督署はみなすのです。

なので、労働基準法89条90条は「労働基準法に抵触しない限り、就業規則は経営者の自由ですが、一旦決めたら労働者の不利益変更は不可能に近いですよ」という法律です。

労働基準法に抵触しない限り、ということは、就業規則が経営者に自由だといっても、労使協定等の労働者の同意を得なければならない労働基準法の条例がある項目については、例外です。

しかし、日本は法治国家であるので、労働基準法に抵触していなくても、民法に抵触する就業規則は違法です。

一概にはいえないものの、労基署の職員は、労働基準法に精通していても、民法には素人であることがほとんどです。労働基準法に抵触しない就業規則は、民法に関して常識の範囲内で判断され、チェックされるものと考えておきましょう。

つまり、民法627条3項には疑義があるものの、就業規則で退職届けの提出期限を「退職日の2週間~3ヶ月」と設ける規定を設ける就業規則を、労働基準監督署は合法と考えるわけです

結局、退職の申し出の期間について法律的にはどうなっているの?

あれあれ?それじゃあ、労働基準法に規定がないなら、民法が優先されて、「3ヶ月前に申し出ないといけないの?」となってしまいそうですが、そうではありません。

一般法民法627条に「2週間前」という規定はあるものの、過去の判例により、2つの説に分れています。

  • 民法627条1項の2週間を強行法規とする
  • 経営者の解雇予告との公平さを考えて、就業規則の1ヶ月を強行法規とする

これは労働基準法に大きな理由があるので、解説していきます。

過去の判例が2つに別れた理由は労働基準法2条・20条・5条にあった!

一般的に労働者に不利益な条項を就業規則に定めるのは労働基準法に抵触します

この場合、明確な労働基準法上の条文は無いのですが、この場合労働基準法2条、5条、20条により、反論ができます。

◆労働基準法(労働条件の決定)
第2条

  1. 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
  2. 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

◆労働基準法(解雇の予告)
第20条

  1. 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
  2. 解雇予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

◆労働基準法(強制労働の禁止)
第5条

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

そもそも、労働基準法2条により、労働条件は労使対等でなければなりませんので、経営者の労働者への解雇通知は1ヶ月以上なのに、労働者の退職の申し出を3ヶ月前と義務づけるのは不公平です。

解釈によっては、労働基準法2条に抵触しかねません。

しかも、労働基準法5条には、「強制労働の禁止」という条文があります。

退職したい労働者を無理矢理働かせるのは、労働基準法5条に抵触しかねません

労働基準法は、強行法規なので民法より優先します。

さて、退職届けの提出時期についてのトラブルは過去にもあり、裁判の判例がいくつかあります。

労働基準法2条にあるように、「労働者と使用者は対等の立場」であるから、「就業規則遵守義務」「誠実に各々の義務を履行」ということで、双方が被った損害を鑑みて、裁判では判断されます

裁判は、過去の判例が大きく影響します。過去の判例としては、会社側に特別な損害を与えたなど双方の事情を勘案して、出た判決が2種類あります。

  • 民法627条1項の2週間を強行法規とする
  • 経営者の解雇予告との公平さを考えて、就業規則の1ヶ月を強行法規とする

各々の裁判は、会社側と労働者側の双方の被った損害や事情を勘案して、判例が別れてしまったのです。

つまり、一概には言えないところですが、過去の判例から考えると、民法では雇用契約の終了は2週間と定義されているのに、経営者としては、退職の申し出は早くしてもらいたいものですよね。

その結果、「退職届は最低でも1ヶ月前に」という就業規則が多くなってしまったのです

「双方の合意」と誠実な対応が法律に勝ることの方が多い?

どんな就業規則であったとしても、「新入社員がいきなり来なくなった」「LINEで退職届送ってきた」なんて話を聞いたことがある人は多いと思います。

しかし、それを裁判で訴える会社も聞いたことがありません。

筆者が最近聞いた一番滑稽な話を紹介しましょう。

会議室で、上司のA課長に叱られている真っ最中の新入社員B君がいます。

先輩、すみませんがトイレ行っても良いですか?
しょうがねぇなぁ……行ってこい

A課長は許可をして、B君がトイレから戻ってくるのを会議室で待っていたそうです。

しかし、30分経ってもそのB君が帰ってこないので、トイレで倒れているのかと心配したA課長は、他の社員と一緒に会社中のトイレを探し回ったのですが、B君はいません。

そこで、B君の携帯に電話をしました。

おい!B!どこにいるんだ!
自宅にいます!
何やってんだBぃぃぃぃぃ!

なんと自宅にいたのだそうです。B君は「(自宅の)トイレに行っても良いですか?」と課長に申し出て、許可をもらったので、会社から自宅に帰ってきてしまったそうです。

そして翌日A課長のパソコンに、B君からの退職届けが添付されたメールが届いたそうです。

この会社の就業規則には、「退職を申し出るときは1ヶ月以上前に申し出て・・・・・・」という項目があったそうですが、そのままB君の退職手続きが進められました。

つまり、何が言いたいかというと、民法の契約というものは「双方が合意」が何よりも優先されますので、就業規則は二の次だということです

雇用契約も同じです。

ただし、新入社員B君の人としての評価は別問題です。

いてもいなくても良い社員に限っては、トラブルにもなりません。

叱っている最中に、自宅のトイレに逃げ帰るような人材はさすがにいらない……

とA課長は思ったことでしょう。解雇でないだけ優しいというものです。

一般的に日本では、退職の申し出の期間で、周囲に迷惑がかかるという観点からトラブルになったとしても、多くの場合、裁判沙汰になることなく、最終的には本人の意思が優先されます。

優先されるというより、退職を希望する人が、周囲を無視して押し切るというケースの方が多いかもしれません。

だからといって、トラブルにならないように法律を考えるのではなく、どんなときも、人として誠実に対応していれば、経営者側とあなたとの間で「双方の合意」がなされるのです。

できるだけ、常識的な範囲で状況を考えて、1ヶ月~3ヶ月前に退職を申し出るのが一般的ともいえるでしょう

ただし在職中に転職活動をしていたり、病気や家庭の問題など、そうもいかないこともありますので、せめて1ヶ月前には退職の申し出ができるように準備をすることをお勧めします

退職届け提出の理想の時期についてご理解いただけたでしょうか?

次は、さまざまな退職理由についての円満退社の仕方について考えてみましょう。

法律的に円満退職をしたいなら就業規則に従うのがベスト?

就労規則は退職活動する前に絶対目を通そう!

今まで解説してきたように、上司など経営者側と労働者の「双方の合意による」円満退社が理想ではありますが、残念ながら、人生理想どおりにいくとは限りません。

もしも、あなたが今すぐにでも退職したいような状況にあるとき、なるべく円満退社に近い形で辞めるためには、どうすれば良いのでしょう。

有給休暇を利用しよう

一般的に、就業規則に退職の申し出時期を定めている会社が多いのです。

今すぐ辞めたくても、グッと堪えて就業規則の規定には従った方が、トラブルになることもなく円満退社ができます。

しかし、辞めたいと思った会社に、ダラダラと毎日出勤するのは苦痛で、1日も早く退職したいと思うこともあるでしょう。

法律の権利を主張し強引に退職するよりも、退職届を提出して就業規則に則った退職日までの間、有給休暇を消化しつくして退職日とされる日だけ出勤し、退職の挨拶をして退職をするのをお勧めします

引き継ぎはできませんが、出勤したくないほど状況が悪化した場合は、もはや仕方ないでしょう。

就業規則に則った十分な期間を設けて申し出た退職の申し出に対し、「忙しいから有給休暇を認めない」というのは、労働基準法違反です。

有給休暇取得は労働者の権利として労働基準法39条に定められています。

労働者を出勤させて、「有給休暇の買い取り」行為も同様に労働基準法違反です

有給休暇が不足するときは、欠勤扱いを覚悟で出社しないこともできます。

もし就業規則に従わずに退職した場合に、あなたが被る可能性のある不利益とは?

賠償責任を負うかも?

あなたに正当な理由があるなら、労働基準法上、今この瞬間に退職届を書いて提出し、そのまま会社を辞めることもできるわけです。

しかし、労働基準法の強行法規がない場合、あなたが会社と交わした雇用契約は、民法の法律によって縛られています。

例えば、あなたが重要なコンペの主任設計士としてコンペを勝ち取ったとしましょう。

あなたが辞めたために、「主任設計士不在のため、コンペの権利を失ってしまった」なんてこともあり得るのです。

そのような場合、あなたには賠償責任が発生します

あなたにも会社を退職せざる終えない正当な理由があるのかもしれませんが、あなたが会社と交わした雇用契約や会社に負わせた損害問題等、さまざまな問題が生じ、それらを天秤にかけて、そこは裁判で争う問題となります。

先にも書きましたが、裁判は双方の損害や事情を考慮して様々な法律に照らし合わせて、それでも迷ったときは過去の判例を参考に判決が下されます

その判例が先に述べたように諸説あるのです。

民法627条1項の2週間を強行法規とする判例もあれば、就業規則の1ヶ月を強行法規とする判例もあるのです。

退職の仕方で人間としての信用を失う可能性もあり?

裁判沙汰にならなくても、あなたが急に辞めたお陰で、周囲にはさまざまな迷惑がかかってしまいます。

あなたの抜けた仕事の穴を誰かが埋めなければなりません。

その責任放棄が大きければ大きいほど、あなたの評判は悪くなります

もしあなたが、同じ職種・業界に転職する場合、あなたの退職の仕方に関する悪い噂が広まるかもしれません。

また、迷惑をかけた会社の上司や同僚にいつ何処で会うことになるかもわからないのです。

もしかしたら、転職後の新規の取引先の責任者が会社を辞めるときに迷惑をかけた相手かもしれません。考えただけでも恐ろしいですね。

退職するときは「立つ鳥跡を濁さず」の精神があなたの将来のためになる?

周囲のことや自分に課せられたことは成し遂げるように心がけましょう。

どんな事情があったとしても、常識に反した行為をすると少なからず、周囲の誰かに迷惑をかけたり、恨みを買ったりしてしまいます。

そうしたあなたの行為のツケが、いつか何かしらの形で自分に返ってくるものと認識しておいた方が良いでしょう。

そうならないためにも、転職前には、就業規則を読み直して退職の時期を検討するのが円満退職の秘訣といえるかもしれません。

次は、退職時の退職金について解説していきます。

退職するときの退職金について法律上どうなっているの?

退職金にも種類がいろいろあります!

労働基準法によると退職金は法律上なくても良いもの!?

就業規則には、賃金規定は必須事項です。

退職金を支払う会社は、退職金に関する細かい規定を就業規則に記さなければなりません

◆労働基準法 (就業規則に定める事項 89条)

3 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

3の2 退職手当の定めをする場合においては、適応される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払時期に関する事項

現在において、正社員の場合は一定の年数を働いた社員に対し、退職金の支払いは一般的になっていますが、通常労働基準法において退職金は絶対に支払わなければならないものではないのです

労働基準法にも「退職金の定めをする場合は」と規定されています。

そのため、退職金の支払いについての規定については、会社の就業規則を確認しましょう。

例えば、3年以上働いた社員に退職金が支払われるなら、2年と10ヶ月で退職するのは退職金を貰えないので、勿体ない話です。

また私の知る限り、某大手電機メーカーの退職金の規程では10年以上働いたら、退職金の計算式が大きく変わって10年未満で辞めた人に比べて、10年で辞めた人の退職金は大幅に増えるのだそうです。

どうせ辞めるなら、「賞与をもらって辞めよう」と考える人は多いでしょうが、その時の退職金についても就業規則を綿密に読みなおすと、予想外にお得な思いをするかもしれません。

ただし、退職金をもらって辞めた場合、その年のあなたの年収は大幅に増えます。

年収が増えるということは、所得税だけでなく翌年の市民税も大幅に増加します

転職先の翌年の月収から、昨年の年収分の莫大な市民税が控除されることになりますので、退職金をもらう場合は、税金のことも考えて貯金しておくことをお勧めします。

退職金の種類を知ろう

退職金は、長年働いた恩恵的なものと、慣例的なもの、企業年金的なものがあります。

恩恵型退職金

恩恵型の場合は、退職金の計算の仕方を吟味して、正しい金額が貰えているかを確認しましょう。

恩恵的に支払われる退職金の場合は、就業規則にその計算方法が明確に記されている場合が多いので確認しやすいのです。

筆者は労働相談で、「急な退職だからという理由で退職金を減額された」という相談を受けたことがあります。

いくら長年働いた恩恵型退職金だからといっても、経営者の主観が入ってよいはずはありません。

退職金も賃金に分類されますので、詳細な就業規則に定められているとおりの額の退職金を受け取る権利があることを知っておきましょう

なお、就業規則にも記載があると思いますが、退職理由が懲戒解雇の場合は該当しません。

また、退職前に会社に多大な損害を与えた場合に限り、あとから損害賠償金を請求されるケースもあります。心当たりのある人は気をつけて下さいね。

ですが、本人の同意無しに勝手に退職金と相殺して良いものではありません。退職する労働者が損害賠償金を請求されることが決まっていたとしても、調停や裁判で、異議申し立てや減額の申し立てをする権利も残されています。

そのため、退職金と損害賠償金の勝手な相殺は許されていないのです

余談ですが、損害賠償を請求されるような事例は、ほとんどが懲戒解雇のケースで、退職金を支払わないことで、会社の損害を賄うことが多いのが現状です。

そのような場合に、自己都合退職扱いで、あとから損害賠償請求をされるような場合は、労働者の将来を考えての温情措置です。なので多くの場合は、双方の合意がなされているケースが多いでしょう。

慣例的なものの場合

会社の業績によって、退職金の金額が変わるような計算方法が明確でない場合は、過去に退職した人の退職金を聞き取り調査しておくことをお勧めします。

円満退職でない場合、急な退職で被る迷惑料を勘案して、「業績が悪い」を言い訳に、支払いを減額されたり、支払いを猶予されたり、支払って貰えないこともあります。

そのような場合は、現在の会社の業績と退職金の聞き取り調査を証拠に、経営者と争うこともできます

退職金の請求権の時効は2年ではなく、退職金保護の観点から5年に法改正されています。退職金の請求の時効は5年ですから、民法の請求権の時効とは違いますので、覚えておきましょう。

◆労働基準法(時効)

第115条 この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職金の請求権は5年間行なわない場合においては、時効によって消滅する。

企業年金型退職金

考えなければならないのは、確定拠出年金型と企業年金型の退職金です。

企業年金の種類


  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 企業年金連合会が管理している通算企業年金
  • 税制適格退職年金(移行できない)
  • 中小企業退職金共済制度(移行できない)

確定拠出年金は平成17年10月から、確定給付企業年金、企業年金連合会が管理している通算企業年金、また退職金とは関係ありませんが、厚生年金基金も転職先でも移行可能となりました。

法律は持ち運び自由となっていますが、企業によって個々年金システムで運用しているので現実問題として、そのまま移行できるのかどうかは転職先企業の運用システムやルールにもよります。

企業年金には加入期間によって、将来年金がもらえない場合もあります

転職先の会社に移行できたら年金受給資格を満たしますし、もしも移行できなかったとしても個人で加入して継続し、加入期間を満たすこともできるようになったのです。

詳しくは、通算企業年金の企業年金連合会に問い合わせ、個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金を預けている証券会社に問い合わせてみましょう。

専門家によく相談して一時金を受け取るかどうかを選択することをお勧めします

余談ですが、厚生年金基金の場合は、加入期間が一定期間に達していなくても将来年金として貰えることもありますので、厚生年金基金連合会に問い合わせましょう。

また、FP(ファイナンシャル・プランナー)等の専門家に相談するのもお勧めです。

残念ながら税制適格退職年金中小企業退職金共済制度は対象外ですので、企業年金の加入期間を満たしている人は手続きの仕方を問い合わせ、同期間を満たしていない人は、脱退手続きとともに一時金をもらっておきましょう。

退職奨励は法律的には自己都合退職ではない?

自己都合のように思えて実は違うケースもあります

会社の業績が悪くなったときによく聞き、退職金を上乗せする条件で、早期退職希望者を募る「退職奨励」については、退職志願者の同意が必要です。

これは、退職金増額を餌にリストラ対象者の希望者を募るようなものです

自分から志願したからといっても、この退職は雇用保険法上の自己都合退職には該当しない場合があります。

失業保険をもらうとき、解雇と同等と扱われ、待機期間が7日に短縮される可能性があるのです。

退職奨励の場合は、離職票の退職理由に「自己都合退職」の覧にチェックがついていても、ハローワークで異議申し立てをすれば、解雇扱いとしてもらえるケースもあることを認識しておきましょう

パワハラやセクハラ、いじめなどが原因で退職に追い込まれた場合も同じです

ただし、その場合は、ハローワークの職員が会社に連絡して真偽を確かめるケースが多いので、せっかく辞めてストレスから解放されたのに、また嫌な思いをしなければならない可能性も高く、今度は戦う強い意思を持たなければならないのです。

ですが、交渉してくれるのはハローワークの職員ですから、ハローワークは労働者の味方の行政機関であることも認識しておきましょう。

あなたがハラスメントで退職に追いやられたのなら、あなたの味方になって、さまざまなアドバイスをしてくれます。

一方、別の選択肢もあります。

失業給付をもらわないまま1年以内に再就職できれば、雇用保険の加入期間は継続されますので、失業給付をもらわない方が、次の退職の時に加入期間が長くなって失業給付が増加することもあります

自己都合退職・解雇・年齢・加入期間によって、給付日数が大きく異なりますので、「ハローワークインターネットサービスに、失業給付の基本手当の所定給付日数」を参考に、どちらが得かを考えて行動しましょう。

基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

しかし、失業給付は前職の平均賃金から算出した賃金日額の50%~80%です。

賃金の低い人ほどパーセンテージが高いので、平均的なサラリーマンの方の場合、前職月給の6割程度です。

筆者の個人的見解としては、どうしても転職が難しく、生活に困ってしまっている場合以外は、待機期間中にせっせと再就職に励んで新たな人生を歩み出した方がお勧めです

まとめ

退職するのは大変ですが、円満に退職できるよう頑張っていきましょう!

退職について、さまざまな法的見解を紹介し、法的な権利と人間として幸せになる考え方の両方において解説してきました。

退職届けは、退職理由を書く必要はなく、「私、□□□□は、一身上の都合により○月○日をもって退職させていただきます。今までお世話になりありがとうございました。これだけでいいのです

そして、退職の決心が固まっている場合は「退職願」ではなく「退職届」です。

一方、転職の際には、退職理由は必ず関心を持たれる事項になります。世の中は狭いので、退職理由を誤魔化してウソをついても、いつかバレてしまうかもしれません。悪い噂は広まるものです。

ですから、退職を考えるときは、計画的に行動を起こし、早めに上司に申し出て、周囲に引き継ぎをしっかりしてから、円満退職を心がけましょう

上司に退職の意思を伝えて合意を得ていれば、退職日を迎える前に有給休暇を消化しきってしまうことも可能です。

法律について考えるのは、トラブルに巻き込まれてしまったときだけにして、まずは就業規則をよく読んで、できるだけ誠実に円満退職を迎えられるようがんばってみましょう。

その方が、あなたの将来をきっと幸せにしてくれますよ。

でも、戦わなければならないときもあります。そういう場合は、この記事で紹介した法律の力や権利を最大限に利用して勝利を収めて下さいね。

ちなみに労働争議の場合は、裁判よりも中央委員会の個別労働紛争の方が解決も速くて費用もかかりません。そういった知識ももしもの時のために持っておいて損はありません。

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