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【法律を知ろう!】自分に有利な状態で退職するために大事なこと

転職を考えたとき、退職の時期をいつにするのか悩みどころです。

転職先の内定が出て、いざ会社を退職しようとした時に、就業規則に退職の時期に関する規定に初めて気がついた、なんてことはありませんか?

既に就業規則に従うのが不可能なとき、あなたはどうしますか?もしかしたら会社とトラブルになって円満退職できないこともあるかもしれません。

そんなことにならないよう自己防衛のため、退職に関する法律について知識を持っておきましょう。

会社とのトラブル回避のためだけでなく、法律は最も有利に退職する武器になることもあります

ここでは退職に関する法律について解説します。

退職に関する法律とは?

退職に関する法律について知っておこう

退職に関する法律というと、労働基準法ばかり気にする人が多いようですが、自己都合退職の場合は、民法の方が大きく関わってくることもあります

まずは、退職、すなわち雇用契約の終了について、民法と労働基準法の関わりとともに解説します。

雇用契約について

会社に入社するときに、あなたは労働基準法に則った労働条件を書いた書類(労働契約書)を渡され、それに納得した上で、署名捺印して入社しているはずです。

そして、就業規則も渡されているでしょう。これによって、会社(経営者)と社員(労働者)となるあなたの間で、雇用契約が結ばれたことになります。

これは、民法の「契約」に該当します

雇用契約に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
転職内定で雇用契約を結ぶまでに絶対に明確にしておくべき注意点5つ

退職に関するトラブルが生じた時は?

労働に関する法律として、労働基準法というものもあります。退職に関して生じたトラブルについては、民法と労働基準法が関わってくるわけです

なお、会社とのトラブル問題は、傷害・暴行・横領・賄賂等々の刑事罰や税法その他法律が関係してきますが、この記事では、「有利に退職する方法」を解説しますので、これらの法律は除外します。

「民法<労働基準法」という法律には力関係がある

まず民法は一般法、労働基準法は強行法規だということを覚えておきましょう。

つまり、民法と労働基準法に、同じ項目があるとしたら、一般法の民法よりも強行法規の労働基準法の方が優先されるのです

労働基準法は労働者の権利を守るため&健全な会社の手引き書である法律

労働基準法は、経営者よりも圧倒的に立場の弱い労働者のため、憲法に基づき労働者の最低限度の権利を守るために作られた法律になります。

極端に言えば、「悪徳経営者から労働者を守る」ための法律です

労働者にとても有利な法律ではありますが、あくまで労働者の基本的人権を守るための「最低限の権利」を定めたに過ぎません。

ですから、誠実に人として道徳を守って経営している普通の経営者には、不利な法律であるどころか、健全な会社を運営するための手引き書となるべき法律なのです。

一方、経営者の権利は民法が守ってくれます。

退職は、雇用契約の終了ですから、経営者と労働者の双方の合意が理想です。

そのため、円満な退職のために関わる法律も、民法(一般法)と労働基準法(強行法規)の両方の理解が必要になります

「退職の申し出は最低1~3ヶ月前」は法律違反というのはウソ?ホント?

退職の願い出は早めでも遅めでもダメなのか?

結論からいうと、「退職の申し出は最低1~3ヶ月前」というのは、法的にさまざまな解釈があって、ウソもホントもないのです。

その理由と「ではどうすべきなのか?」について詳しく解説していきます。

法律ではどうなっているの?

「退職を申し出るときは退職日の○ヶ月(○日)前に申し出る」というような退職の申し出時期に関して就業規則に規定している会社は多いものです。

一般常識としても、「退職希望日の1~3ヶ月といった引き継ぎが完了する猶予を持って退職を上司に申し出る」のがビジネスマナーだと考える人も少なくないでしょう。

それでは、退職や解雇に関する民法と労働基準法の規定について比較して見ましょう。

民法による退職の規定は?

まず、民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)を紹介しましょう。

◆民法 第627条 ☜クリックして展開 

民法627条によると、雇用の定めのない正社員の場合は、「退職届を出した日の2週間後に雇用関係は終了する」とあります。

つまり、「正社員の場合は、退職希望日の2週間前に退職届を出せば、会社の同意が無くとも退職希望日に退職できる」という意味です。

また、同条3項で、「6ヶ月以上の雇用を定めて報酬を決めたときは、3ヶ月前に退職を申し出るべき」というような条文があります。

本来6ヶ月以上の雇用期間を定めて、半年更新や1年更新で雇用契約を結ぶ期限付の雇用契約についての条文ですが、拡大解釈をして、期間の定めのない正社員の場合も当てはめることができないわけではありません。

すると、「6ヶ月以上の期間雇用契約を結ぶ期間の定めのない正社員として報酬(給与)を定めた者」と解釈を展開すれば、「退職は3ヶ月以上前に申し出なければならない」という就業規則もあながち違法では無いのです

労働基準法による退職・解雇の規定は?

一方、労働基準法の労働者の退職に関する定めはというと、明確な定めはありません。

確かに労働基準法にも、解雇・退職の規定を設ける規定はあります。

しかし、労働基準法は労働者を守る法律ですから、不当解雇を防ぐために、解雇に関する細かい規定ばかりです

労働基準法には、就業規則が労働基準法に抵触していないかチェックするために、労働基準監督署の届け出義務もあり、その時に労働者の過半数を代表する者(労働組合の代表者含む)の意見書も必要としています。

労働基準監督署のチェックに合格した就業規則は、労働者全員に周知する義務の規定もあります。

就業規則の全文を書いた書類や冊子を労働者全員に配布したり、労働者全員が見る場所に就業規則全文を掲示したら、経営者は執行規則の周知義務を果たした者とされます。

就業規則の全文の書類を配布されていれば、社員はその内容を把握する義務もある

就業規則には、退職の意思表示をする時期の規定が書いてあることが多いのです。

もしも退職に関してトラブルが生じた時は、「社員は就業規則を知っている前提でお話が進む」ということを知っていなければなりません

だから、退職を考えたときは、退職届を出さなければならない時期について、就業規則の退職の規定の確認を忘れないようにしなければなりません。

労働基準法にも、就業規則の遵守義務が規定されています。

ただし、この条文が、就業規則に退職届けの提出の時期について「○ヶ月前」義務づけることが合法だという訳ではありません。

就業規則に3ヶ月前の退職の申し出を義務づける項目がある場合は?

判例でも民法の「2週間前」と解雇予告との公平性を考えて「1ヶ月前」というのが強行法規という2つの説に分れているだけですから、「3ヶ月前の退職の申し出は、早すぎるのではないのか?」と思うかもしれませんが、執行規則に退職の申し出を「3ヶ月前」と規定する会社もあります。

民法627条3項を拡大解釈したのか、一般常識からなのか、それは定かではありませんが、「退職の申し出は3ヶ月前にしなければならない」という内容を就業規則に明記しても、その就業規則を労働基準監督署のチェックは通過します。

退職届けの申し出の判例には「3ヶ月前」なんてないのに、どうしてなのでしょうか?

それは、この規定のある就業規則が違法かどうかを判断する労働基準監督署は、「労働基準法に抵触していないか」のチェック機関だからです

労働基準法には、退職届の期間の定めについて規定はありませので、退職届の期間の定めについては、就業規則に何と書かれていても労働基準法に抵触しようがありません

「3ヶ月前の退職届提出」については、民法・労働基準法上も、常識的にも、何の問題もなさそうに見えます。

ですが、3ヶ月前の退職の申し出は、労働者には早すぎます。経営者の解雇予告通知も1ヶ月前で良いのに、不公平だという判例だってあるではありませんか。どうしてでしょう?

執行規則に関する法律が労働基準法にある

就業規則については、労働基準法89条に、作成(変更も含む)・届け出については90条に、解釈の仕方の例も含めて非常に詳しく書かれています。

社員が10人以上の会社は就業規則を定めなければならず、労働基準法に抵触しない限り経営者が自由に定めることができます

就業規則を労働基準監督署に提出する際には、経営者が作成した就業規則を労働者の過半数を代表する者、あるいは労働組合の代表者に見せ、彼らの「意見書の添付」が義務づけられています。

ここが重要

就業規則に添付するのは労働者の代表者の「意見書」であり「同意書」ではない

労働基準法に抵触していなければ、労働者全員が反対する意見書付就業規則でも合法とされるわけです。労働基準法90条の判例を元にした解釈例規(②意見聴取の程度)に、この内容はしっかりと明記されています。

しかし、労働者の意見を無視した就業規則の不利益変更は原則禁止です(労働契約法9条)

明らかに労働者に不利となる就業規則の変更届けの場合は違ってきます。

労働基準監督署で行われる3つの審査


  1. 変更前の就業規則に比べてどのくらい不利益になるのか?(不利益の程度の審査)
  2. 就業規則の不利益変更の必要性について相当な合理的な理由があるのか?
  3. 就業規則の変更内容を相当な話し合いを持って労働者に周知されたのか?

3が十分に行なわれていて、労働者が納得済みなら問題はないのです(労働契約法10条)。

しかし、1の不利益度にもよりますが、2の「相当な合理的な理由」については、その変更をしなければ、会社が倒産する等の明確な危機迫るよほどの理由がない限り、労働基準監督署は、就業規則の変更を経営者に差し戻します。

労働者全員が納得していたとしても同様です。労働者が騙されているものと労働基準監督署はみなすのです。

なので、労働基準法89条90条は「労働基準法に抵触しない限り、就業規則は経営者の自由ですが、一旦決めたら労働者の不利益変更は不可能に近いですよ」という法律です。

労働基準法に抵触しない限り、ということは、就業規則が経営者に自由だといっても、労使協定等の労働者の同意を得なければならない労働基準法の条例がある項目については、例外です。

しかし、日本は法治国家であるので、労働基準法に抵触していなくても、民法に抵触する就業規則は違法です。

一概にはいえないものの、労基署の職員は、労働基準法に精通していても、民法には素人であることがほとんどです。労働基準法に抵触しない就業規則は、民法に関して常識の範囲内で判断され、チェックされるものと考えておきましょう。

つまり、民法627条3項には疑義があるものの、就業規則で退職届けの提出期限を「退職日の2週間~3ヶ月」と設ける規定を設ける就業規則を、労働基準監督署は合法と考えるわけです

結局、退職の申し出の期間について法律的にはどうなっているの?

あれあれ?それじゃあ、労働基準法に規定がないなら、民法が優先されて、「3ヶ月前に申し出ないといけないの?」となってしまいそうですが、そうではありません。

一般法民法627条に「2週間前」という規定はあるものの、過去の判例により、2つの説に分れています。

  • 民法627条1項の2週間を強行法規とする
  • 経営者の解雇予告との公平さを考えて、就業規則の1ヶ月を強行法規とする

これは労働基準法に大きな理由があるので、解説していきます。

過去の判例が2つに別れた理由は労働基準法2条・20条・5条にあった!

一般的に労働者に不利益な条項を就業規則に定めるのは労働基準法に抵触します

この場合、明確な労働基準法上の条文は無いのですが、この場合労働基準法2条、5条、20条により、反論ができます。

そもそも、労働基準法2条により、労働条件は労使対等でなければなりませんので、経営者の労働者への解雇通知は1ヶ月以上なのに、労働者の退職の申し出を3ヶ月前と義務づけるのは不公平です。

解釈によっては、労働基準法2条に抵触しかねません。

しかも、労働基準法5条には、「強制労働の禁止」という条文があります。

退職したい労働者を無理矢理働かせるのは、労働基準法5条に抵触しかねません

労働基準法は、強行法規なので民法より優先します。

さて、退職届けの提出時期についてのトラブルは過去にもあり、裁判の判例がいくつかあります。

労働基準法2条にあるように、「労働者と使用者は対等の立場」であるから、「就業規則遵守義務」「誠実に各々の義務を履行」ということで、双方が被った損害を鑑みて、裁判では判断されます

裁判は、過去の判例が大きく影響します。過去の判例としては、会社側に特別な損害を与えたなど双方の事情を勘案して、出た判決が2種類あります。

  • 民法627条1項の2週間を強行法規とする
  • 経営者の解雇予告との公平さを考えて、就業規則の1ヶ月を強行法規とする

各々の裁判は、会社側と労働者側の双方の被った損害や事情を勘案して、判例が別れてしまったのです。

つまり、一概には言えないところですが、過去の判例から考えると、民法では雇用契約の終了は2週間と定義されているのに、経営者としては、退職の申し出は早くしてもらいたいものですよね。

その結果、「退職届は最低でも1ヶ月前に」という就業規則が多くなってしまったのです

「双方の合意」と誠実な対応が法律に勝ることの方が多い?

どんな就業規則であったとしても、「新入社員がいきなり来なくなった」「LINEで退職届送ってきた」なんて話を聞いたことがある人は多いと思います。

しかし、それを裁判で訴える会社も聞いたことがありません。

筆者が最近聞いた一番滑稽な話を紹介しましょう。

会議室で、上司のA課長に叱られている真っ最中の新入社員B君がいます。

先輩、すみませんがトイレ行っても良いですか?
しょうがねぇなぁ……行ってこい

A課長は許可をして、B君がトイレから戻ってくるのを会議室で待っていたそうです。

しかし、30分経ってもそのB君が帰ってこないので、トイレで倒れているのかと心配したA課長は、他の社員と一緒に会社中のトイレを探し回ったのですが、B君はいません。

そこで、B君の携帯に電話をしました。

おい!B!どこにいるんだ!
自宅にいます!
何やってんだBぃぃぃぃぃ!

なんと自宅にいたのだそうです。B君は「(自宅の)トイレに行っても良いですか?」と課長に申し出て、許可をもらったので、会社から自宅に帰ってきてしまったそうです。

そして翌日A課長のパソコンに、B君からの退職届けが添付されたメールが届いたそうです。

この会社の就業規則には、「退職を申し出るときは1ヶ月以上前に申し出て・・・・・・」という項目があったそうですが、そのままB君の退職手続きが進められました。

つまり、何が言いたいかというと、民法の契約というものは「双方が合意」が何よりも優先されますので、就業規則は二の次だということです

雇用契約も同じです。

ただし、新入社員B君の人としての評価は別問題です。

いてもいなくても良い社員に限っては、トラブルにもなりません。

叱っている最中に、自宅のトイレに逃げ帰るような人材はさすがにいらない……

とA課長は思ったことでしょう。解雇でないだけ優しいというものです。

一般的に日本では、退職の申し出の期間で、周囲に迷惑がかかるという観点からトラブルになったとしても、多くの場合、裁判沙汰になることなく、最終的には本人の意思が優先されます。

優先されるというより、退職を希望する人が、周囲を無視して押し切るというケースの方が多いかもしれません。

だからといって、トラブルにならないように法律を考えるのではなく、どんなときも、人として誠実に対応していれば、経営者側とあなたとの間で「双方の合意」がなされるのです。

できるだけ、常識的な範囲で状況を考えて、1ヶ月~3ヶ月前に退職を申し出るのが一般的ともいえるでしょう

ただし在職中に転職活動をしていたり、病気や家庭の問題など、そうもいかないこともありますので、せめて1ヶ月前には退職の申し出ができるように準備をすることをお勧めします

退職届け提出の理想の時期についてご理解いただけたでしょうか?

まとめ

退職するのは大変ですが、円満に退職できるよう頑張っていきましょう!

退職について、さまざまな法的見解を紹介し、法的な権利と人間として幸せになる考え方の両方において解説してきました。

退職届けは、退職理由を書く必要はなく、「私、□□□□は、一身上の都合により○月○日をもって退職させていただきます。今までお世話になりありがとうございました。これだけでいいのです

退職の決心が固まっている場合は「退職願」ではなく「退職届」です。

そして法律上、退職金がどういう扱いなのかを知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
【就業規則に従って円満退職】退職金は法律上どうなっているの?

もしも退職に関して戦わなければならない事態になった場合は、この記事で紹介した法律の力や権利を最大限に利用して勝利を収めて下さいね。

ちなみに労働争議の場合は、裁判よりも中央委員会の個別労働紛争の方が解決も速くて費用もかかりません。そういった知識ももしもの時のために持っておいて損はありません。

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