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【就業規則に従って円満退職】退職金は法律上どうなっているの?

退職に関する法律については、こちらの記事で説明してきました。
【法律を知ろう!】自分に有利な状態で退職するために大事なこと

では、退職時の退職金は法律上どうなっているかご存知ですか。

受け取る権利があるものはきちんと受け取っておかないと、後味の悪い退職になりますので、これを機会にしっかり知識をつけておきましょう。

退職するときの退職金は法律上どうなっているの?

退職金にも種類がいろいろあります!

労働基準法によると退職金は法律上なくても良いもの!?

就業規則には、賃金規定は必須事項です。

退職金を支払う会社は、退職金に関する細かい規定を就業規則に記さなければなりません。

◆労働基準法 (就業規則に定める事項 89条)

3 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

3の2 退職手当の定めをする場合においては、適応される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払時期に関する事項

現在において、正社員の場合は一定の年数を働いた社員に対し、退職金の支払いは一般的になっていますが、通常労働基準法において退職金は絶対に支払わなければならないものではないのです

労働基準法にも「退職金の定めをする場合は」と規定されています。

退職金の支払いについての規定については、会社の就業規則を確認しよう

私が働いている会社は、3年以上働いた社員に退職金が支払われるから、働き始めて2年と10ヶ月経った今退職するのは退職金を貰えないので、もったいないって思っちゃう。

特に不満はないので、辞めるつもりはないんですけどね。

似たようなこと聞いたことあるよ。

某大手電機メーカーの退職金の規程では、10年以上働いたら退職金の計算式が大きく変わるらしい。

10年未満で辞めた人に比べて、勤続10年以上で辞めた人の退職金は大幅に増えるんだってさ。

どうせ辞めるんなら、「ボーナスもらって辞めよう」と考える人は多いと思いますけど、退職金についても就業規則をしっかり読み返すと、予想外にお得な思いをするかもしれませんよね。

ただし、退職金をもらって辞めた場合、その年のあなたの年収は大幅に増えます。

年収が増えるということは、所得税だけでなく翌年の市民税も大幅に増加します

転職先の翌年の月収から、昨年の年収分の莫大な市民税が控除されることになりますので、退職金をもらう場合は、税金のことも考えて貯金しておくことをお勧めします。

退職金の種類を知ろう

退職金は、長年働いた恩恵的なものと、慣例的なもの、企業年金的なものがあります。

恩恵型退職金とは

恩恵型の場合は、退職金の計算の仕方を吟味して、正しい金額が貰えているかを確認しましょう。

恩恵的に支払われる退職金の場合は、就業規則にその計算方法が明確に記されている場合が多いので確認しやすいのです。

筆者は労働相談で、「急な退職だからという理由で退職金を減額された」という相談を受けたことがあります。

いくら長年働いた恩恵型退職金だからといっても、経営者の主観が入ってよいはずはありません。

退職金も賃金に分類されますので、詳細な就業規則に定められているとおりの額の退職金を受け取る権利があることを知っておきましょう

なお、就業規則にも記載があると思いますが、退職理由が懲戒解雇の場合は該当しません。

また、退職前に会社に多大な損害を与えた場合に限り、あとから損害賠償金を請求されるケースもあります。心当たりのある人は気をつけて下さいね。

ですが、本人の同意無しに勝手に退職金と相殺して良いものではありません。退職する労働者が損害賠償金を請求されることが決まっていたとしても、調停や裁判で、異議申し立てや減額の申し立てをする権利も残されています。

そのため、退職金と損害賠償金の勝手な相殺は許されていないのです

余談ですが、損害賠償を請求されるような事例は、ほとんどが懲戒解雇のケースで、退職金を支払わないことで、会社の損害を賄うことが多いのが現状です。

そのような場合に、自己都合退職扱いで、あとから損害賠償請求をされるような場合は、労働者の将来を考えての温情措置です。なので多くの場合は、双方の合意がなされているケースが多いでしょう。

慣例的なものの場合

会社の業績によって、退職金の金額が変わるような計算方法が明確でない場合は、過去に退職した人の退職金を聞き取り調査しておくことをお勧めします。

円満退職でない場合、急な退職で被る迷惑料を勘案して、「業績が悪い」を言い訳に、支払いを減額されたり、支払いを猶予されたり、支払って貰えないこともあります。

そのような場合は、現在の会社の業績と退職金の聞き取り調査を証拠に、経営者と争うこともできます

退職金の請求権の時効は2年ではなく、退職金保護の観点から5年に法改正されています。退職金の請求の時効は5年ですから、民法の請求権の時効とは違いますので、覚えておきましょう。

◆労働基準法(時効)

第115条 この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職金の請求権は5年間行なわない場合においては、時効によって消滅する。

企業年金型退職金とは

考えなければならないのは、確定拠出年金型と企業年金型の退職金です。

企業年金の種類


  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 企業年金連合会が管理している通算企業年金
  • 税制適格退職年金(移行できない)
  • 中小企業退職金共済制度(移行できない)

確定拠出年金は平成17年10月から、確定給付企業年金、企業年金連合会が管理している通算企業年金、また退職金とは関係ありませんが、厚生年金基金も転職先でも移行可能となりました。

法律は持ち運び自由となっていますが、企業によって個々年金システムで運用しているので現実問題として、そのまま移行できるのかどうかは転職先企業の運用システムやルールにもよります。

企業年金には加入期間によって、将来年金がもらえない場合もあります

転職先の会社に移行できたら年金受給資格を満たしますし、もしも移行できなかったとしても個人で加入して継続し、加入期間を満たすこともできるようになったのです。

詳しくは、通算企業年金の企業年金連合会に問い合わせ、個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金を預けている証券会社に問い合わせてみましょう。

専門家によく相談して一時金を受け取るかどうかを選択することをお勧めします

余談ですが、厚生年金基金の場合は、加入期間が一定期間に達していなくても将来年金として貰えることもありますので、厚生年金基金連合会に問い合わせましょう。

また、FP(ファイナンシャル・プランナー)等の専門家に相談するのもお勧めです。

残念ながら税制適格退職年金中小企業退職金共済制度は対象外ですので、企業年金の加入期間を満たしている人は手続きの仕方を問い合わせ、同期間を満たしていない人は、脱退手続きとともに一時金をもらっておきましょう。

退職奨励は法律的には自己都合退職ではない?

自己都合のように思えて実は違うケースもあります

会社の業績が悪くなったときによく聞き、退職金を上乗せする条件で、早期退職希望者を募る「退職奨励」については、退職志願者の同意が必要です。

これは、退職金増額を餌にリストラ対象者の希望者を募るようなものです

自分から志願したからといっても、この退職は雇用保険法上の自己都合退職には該当しない場合があります。

失業保険をもらうとき、解雇と同等と扱われ、待機期間が7日に短縮される可能性があるのです。

離職票の退職理由に「自己都合退職」の覧にチェックがついていても!

退職奨励の場合はハローワークで異議申し立てをすれば、解雇扱いとしてもらえるケースもある

パワハラやセクハラ、いじめなどが原因で退職に追い込まれた場合も同じです

ただし、その場合は、ハローワークの職員が会社に連絡して真偽を確かめるケースが多いので、せっかく辞めてストレスから解放されたのに、また嫌な思いをしなければならない可能性も高く、今度は戦う強い意思を持たなければならないのです。

ですが、交渉してくれるのはハローワークの職員ですから、ハローワークは労働者の味方の行政機関であることも認識しておきましょう。

あなたがハラスメントで退職に追いやられたのなら、あなたの味方になって、さまざまなアドバイスをしてくれます。

一方、別の選択肢もあります。

失業給付をもらわないまま1年以内に再就職できれば、雇用保険の加入期間は継続されますので、失業給付をもらわない方が、次の退職の時に加入期間が長くなって失業給付が増加することもあります

自己都合退職・解雇・年齢・加入期間によって、給付日数が大きく異なりますので、「ハローワークインターネットサービスに、失業給付の基本手当の所定給付日数」を参考に、どちらが得かを考えて行動しましょう。

基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

しかし、失業給付は前職の平均賃金から算出した賃金日額の50%~80%です。

賃金の低い人ほどパーセンテージが高いので、平均的なサラリーマンの方の場合、前職月給の6割程度です。

筆者の個人的見解としては、どうしても転職が難しく、生活に困ってしまっている場合以外は、待機期間中にせっせと再就職に励んで新たな人生を歩み出した方がお勧めです

次は、さまざまな退職理由についての円満退社の仕方について考えてみましょう。

法律的に円満退職をしたいなら就業規則に従うのがベスト?

就労規則は退職活動する前に絶対目を通そう!

今まで解説してきたように、上司など経営者側と労働者の「双方の合意による」円満退社が理想ではありますが、残念ながら、人生理想どおりにいくとは限りません。

もしも、あなたが今すぐにでも退職したいような状況にあるとき、なるべく円満退社に近い形で辞めるためには、どうすれば良いのでしょう。

有給休暇を利用しよう

一般的に、就業規則に退職の申し出時期を定めている会社が多いのです。

今すぐ辞めたくても、グッと堪えて就業規則の規定には従った方が、トラブルになることもなく円満退社ができます。

しかし、辞めたいと思った会社に、ダラダラと毎日出勤するのは苦痛で、1日も早く退職したいと思うこともあるでしょう。

法律の権利を主張し強引に退職するよりも、退職届を提出して就業規則に則った退職日までの間、有給休暇を消化しつくして退職日とされる日だけ出勤し、退職の挨拶をして退職をするのをお勧めします

引き継ぎはできませんが、出勤したくないほど状況が悪化した場合は、もはや仕方ないでしょう。

労働基準法違反

  • 就業規則に則った十分な期間を設けて申し出た退職の申し出に対し、忙しいから有給休暇を認めない
    (有給休暇取得は労働者の権利として労働基準法39条に定められている)
  • 労働者を出勤させて、「有給休暇の買い取り」行為
    (有給休暇が不足するときは、欠勤扱いを覚悟で出社しないこともできる)

もし就業規則に従わずに退職した場合に、あなたが被る可能性のある不利益とは?

賠償責任を負うかも?

あなたに正当な理由があるなら、労働基準法上、今この瞬間に退職届を書いて提出し、そのまま会社を辞めることもできるわけです。

しかし、労働基準法の強行法規がない場合、あなたが会社と交わした雇用契約は、民法の法律によって縛られています。

例えば、あなたが重要なコンペの主任設計士としてコンペを勝ち取ったとしましょう。

あなたが辞めたために、「主任設計士不在のため、コンペの権利を失ってしまった」なんてこともあり得るのです。

そのような場合、あなたには賠償責任が発生します

あなたにも会社を退職せざるを得ない正当な理由があるのかもしれませんが、あなたが会社と交わした雇用契約や会社に負わせた損害問題等、さまざまな問題が生じ、それらを天秤にかけて、そこは裁判で争う問題となります。

先にも書きましたが、裁判は双方の損害や事情を考慮して様々な法律に照らし合わせて、それでも迷ったときは過去の判例を参考に判決が下されます

その判例が先に述べたように諸説あるのです。

民法627条1項の2週間を強行法規とする判例もあれば、就業規則の1ヶ月を強行法規とする判例もあるのです。

退職の仕方で人間としての信用を失う可能性もあり?

裁判沙汰にならなくても、あなたが急に辞めたお陰で、周囲にはさまざまな迷惑がかかってしまいます。

あなたの抜けた仕事の穴を誰かが埋めなければなりません。

その責任放棄が大きければ大きいほど、あなたの評判は悪くなります

もしあなたが、同じ職種・業界に転職する場合、あなたの退職の仕方に関する悪い噂が広まるかもしれません。

また、迷惑をかけた会社の上司や同僚にいつ何処で会うことになるかもわからないのです。

もしかしたら、転職後の新しい取引先の責任者が会社を辞めるときに迷惑をかけた相手かもしれません。考えただけでも恐ろしいですね。

退職するときは「立つ鳥跡を濁さず」の精神があなたの将来のためになる?

周囲のことや自分に課せられたことは成し遂げるように心がけましょう。

どんな事情があったとしても、常識に反した行為をすると少なからず、周囲の誰かに迷惑をかけたり、恨みを買ったりしてしまいます。

そうしたあなたの行為のツケが、いつか何かしらの形で自分に返ってくるものと認識しておいた方が良いでしょう。

そうならないためにも、転職前には、就業規則を読み直して退職の時期を検討するのが円満退職の秘訣といえるかもしれません。

まとめ

退職金と円満退職のまとめ

退職を考えるときは、下記に注意して円満退職を心がけましょう。

  • 計画的に行動を起こす
  • 早めに上司に申し出る
  • 周囲に引き継ぎをしっかりする

上司に退職の意思を伝えて合意を得ていれば、退職日を迎える前に有給休暇を消化しきってしまうことも可能です。

そして労働基準法において、退職金は絶対に支払われなければならないものではありません。

退職金の支払いの規定については会社の就業規則を確認し、自分にとって最善の方法で受け取れるようにしましょう。

法律について考えるのは、トラブルに巻き込まれてしまったときだけにして、まずは就業規則をよく読んで、できるだけ誠実に円満退職を迎えられるようがんばってみましょう。

その方が、あなたの将来をきっと幸せにしてくれますよ。

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